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第九回俳句甲子園・最優秀賞を獲得した一句。今年の個人賞審査会は難航した。作品の質は毎年毎年確実に上がってきているのだが、今年最終選考に残った作品は巧いけれどもどれもやや小粒。最優秀賞は小器用にまとまった句ではなく、大きく広がっていくような作品にしたいという思いを審査員全員が持っていたものだから、かなりの激論になった。
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そんな中で浮上してきたのが、この一句。まずは「宛先」の一語で、誰かが誰かへ何かを送ろうとしていることは分かるわけだが、それ以上のことは何も語っていない。しかもその「宛先」を「ゑのころぐさ」が「知つてをる」と、つぶやいているのみなのだ。
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作者の一途な思いを届けようとするその「宛先」を、土手の風にそよぐ「ゑのころぐさ」は「知つてをる」のだよと読んでもいいし、はたまた作者自身が誰に宛てればよいのか分からない鬱屈した思いを「ゑのころぐさ」は「知つてをる」のだと嘯きつつ、作者は自身の中にその答えを探していると読んでもいいだろう。
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明確なテーマ性を持った句、見事な映像を伝えた句、個性の強い詩的世界を構築した句など、さまざまな作品が最優秀賞を射止めてきたが、この「ゑのころぐさ」のようなタイプの作品はこれまで選ばれたことは無かった。このような優しくも屈折した謎を含んだ作品もまたあってよいのだよというメッセージと共に、俳句甲子園の未来に向けた一つの指標として、この句を推しだすことになった。
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口語の表現ながら歴史的仮名遣いをつかっている点に違和感を感じる向きもあるだろうが、表現の世界における高校生の可能性にある種の枷をはめてしまうよりは、こんな表現もあるあんな表現もあると果敢に試してみることの方が大切なのではないか。そこをしっかりと押さえておかねば、俳句甲子園の未来は偏ったものになるのではないか。そんな声にも大いに納得をさせられた今年の審査会であった。
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